【現役助産師解説】妊婦健診の尿検査を徹底解説:どんな検査?何がわかる?

妊娠生活

妊婦健診のたびに行われる尿検査。この検査がなぜ行われているのか、何がわかるのか気になる方も多いのではないでしょうか?

この記事では、尿検査でチェックされる項目や、その結果が示す意味について、わかりやすく説明します。
ぜひ参考にしてくださいね。

総監修:加賀みなみ 現役助産師
資格:助産師国家資格・看護師国家資格・受胎調節実施指導員・新生児蘇生法A・桶谷式乳房管理法・BSケア
大学病院・クリニック・母乳育児相談室で1万人以上のママ・赤ちゃんのケアに関わる

さっそく、尿検査の内容について詳しくみていきましょう。
まずは尿糖についてご紹介します。

尿糖

妊娠中の健診で行われる尿検査の一つに「尿糖検査」というものがあります。この検査では、尿の中にグルコース)が含まれているかどうかを調べます。

普段、健康な人の尿にはほとんど糖が含まれていません。これは、体が糖をエネルギーとして使い、余った糖は腎臓で再吸収されるため、尿に出にくいからです。

では、なぜ妊婦健診の尿検査で尿糖が出ることがあるのでしょうか?

  • 妊娠糖尿病
    1つ目に考えられるのは、妊娠糖尿病です。妊娠中には、一時的に糖をうまく処理できなくなることがあります。これを妊娠糖尿病といいます。妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見される糖尿病の一種で、ママと赤ちゃんの健康に影響を与えることがあります。そのため、早めに見つけてしっかりと管理していくことが大切です。
  • ホルモンの影響
    妊娠中は、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが弱くなることがあります。このため、血糖値が高くなりやすく、尿にも糖が出やすくなります。ホルモンの影響で体内のバランスが変わるため、定期的な尿検査でしっかりチェックすることが大切です。

尿糖が陽性になるのは、通常、血糖値が160~180mg/dlを超えたときです。個人差はありますが、通常時の血糖値は100mg/dl未満が正常なので、尿糖が「陽性」ということは、検査時の血糖値がかなり高かったことを意味しています。

尿糖が陽性になったらどうする?

尿糖は、尿検査の前に甘いものや炭水化物をたくさん食べると陽性になることがあります。そのため、病院では今回の結果に限り様子を見て、次回の検査で再び尿糖が出てくるかどうか確かめることがあります。

もし次の健診でも尿糖が陽性になる場合、さらに詳しい検査を行うことがあります。

また、尿検査の結果には同じ陽性の中でも「1+」「2+」「3+」といったレベルがあり、初回の検査で「2+」以上の判定が出た場合、その時点で詳しい検査を行うことがあります。

その詳しい検査というのが、次に説明する75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)です。

75g経口ブドウ糖負荷試験

75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、妊娠糖尿病の診断に用いられる検査です。

の検査は、妊娠中に糖をどれくらい効率的に代謝できるか(=簡単に言うと、体がどれだけうまく糖を処理できるか)を調べるテストです。

検査は次のような流れで行われます。

  • 検査前日の絶食
    検査前日の夕食後からは何も食べず、検査に臨みます。水は飲んで大丈夫です。
  • 検査当日の絶食
    朝食を抜き、病院やクリニックに向かいます。
  • 空腹時血糖測る
    病院に到着したら空腹時の血糖値を測るために採血を行います。
  • ブドウ糖溶液を飲む
    75グラムのブドウ糖が溶けた砂糖水(味はほぼサイダー味でカロリーは300kcalほど)を5分以内に飲みます。
  • 時間ごとに採血
    75グラムの甘い飲み物を飲んでから「30分後」「1時間後」「2時間後」に採血を行います。

次の項目の基準値のうち、どれか1つでも超えてしまうと「妊娠糖尿病」と診断されます。

  • 空腹時の血糖
    92mg/dl以上
  • 砂糖水を飲んで1時間後の血糖
    180mg/dl以上
  • 砂糖水を飲んで2時間後の血糖
    153mg/dl以上

妊娠糖尿病は、妊娠してから糖尿病になることをいいますが、これから説明する基準値を超えてくる場合、もともと糖尿病であった可能性が疑われます。

  • 空腹時血糖
    126mg/dl以上
  • HbA1c (妊娠初期の血液検査でわかります)
    6.5%以上
  • 随時血糖・砂糖水を飲んで2時間後の血糖
    200mg/dl以上

尿検査で陽性になると何が心配?

尿検査で尿糖が陽性になると、妊娠糖尿病が心配になります。
妊娠糖尿病は、ママと赤ちゃんの両方に悪い影響を与える可能性があるため、早めに見つけて対処していくことが必要です。

まずは、ママにどのような影響があるのかをみていきましょう。

  • 高血圧
    妊娠高血圧症候群になるリスクが高まります。妊娠高血圧症候群は、高血圧と尿蛋白が同時に発生する状態で、ママの健康に大きな影響を与える可能性があります。高血圧は、妊娠中の腎臓や肝臓に負担をかけ、最悪の場合、発作や脳卒中のリスクを増加させることがあります。
  • 早産
    妊娠糖尿病があると、早産のリスクが高まります。早産とは、37週未満での出産を指します。早産になると、赤ちゃんの発育が十分でない状態で生まれるため、呼吸器や消化器、免疫系の未熟さからくる健康問題が発生することがあります。
  • 感染症
    高血糖は、細菌が繁殖しやすい環境(※)を作り出すため、感染症のリスクが増加します。特に尿路感染症は、腎臓にまで感染が広がると、ママと赤ちゃんの健康に深刻な影響を与えることがあります。
    ※細い血管の血液の流れが悪くなり、酸素や栄養が十分行き渡らず細胞の働きが低下したり、細菌と戦う白血球が感染部位に到達しにくくなるため感染しやすくなります。
  • 将来の糖尿病リスク
    妊娠糖尿病があった場合、将来2型糖尿病になるリスクが高まります。妊娠糖尿病は一時的なものですが、一度経験すると、その後の生活において糖尿病になる可能性が増えます。
    出産後も定期的な健康チェックを続け、健康的な食事や適度な運動を心がけることで、将来の糖尿病リスクを減らすことができます。

次に赤ちゃんへの影響をみていきましょう。

  • 巨大児
    胎児が大きく育ちすぎる(生まれた時の体重が4000g以上)ことがあり、自然分娩が難しくなることがあります。産道を通る際に肩が引っかかる肩甲難産や、帝王切開が必要になることがあります。また自然分娩ができても、大きな赤ちゃんを産む際に、ママの産道や会陰部が大きく裂けるリスクが高まります。さらに、分娩が長引き出血が多くなることがあります。
  • 低血糖
    妊娠中にママの血糖値が高いと、赤ちゃんの膵臓が血糖値を下げるインスリンというホルモンを多く分泌するようになります。そして出生後、ママからの糖分供給が途絶えると、過剰なインスリンの影響で血糖値が急激に低下することがあります。低血糖になると神経系の異常を引き起こしたり、ミルクをうまく飲めなくなることがあります。
  • 呼吸障害
    妊娠糖尿病によって赤ちゃんの肺の成熟が遅れ、呼吸困難や他の呼吸器の問題が生じる可能性があります。
  • 将来の健康リスク
    妊娠中の高血糖環境が赤ちゃんの代謝に影響を与えるため、出生後から思春期にかけて、肥満になるリスクが高くなります。また、妊娠中の高血糖が赤ちゃんのインスリン抵抗性を高めることで、将来、2型糖尿病になるリスクが高くなります。

妊娠糖尿病が赤ちゃんに与える影響はさまざまですが、早期発見と適切な管理を行うことで、そのリスクを大幅に減らすことができます。定期的な健診を受け、医師のアドバイスに従いながら安心して妊娠期間を過ごしてくださいね。

次に尿蛋白についてみていきましょう。

尿蛋白

蛋白尿は、妊婦さんの約4人に1人が少なくとも一度は陽性になると言われています。これは、尿蛋白の検査で「偽陽性」が出やすいためです。偽陽性とは、本当は問題がないのに検査結果で陽性と出てしまうことを意味します。

そのため、尿蛋白の検査で陽性が出ても、すぐに心配する必要はありません。多くの場合、一度様子を見て、次回の妊婦健診で再度確認することが多いです。

もし妊婦健診で蛋白尿が2回続けて出てくる場合は、詳しい検査である「24時間蓄尿」もしくは「蛋白/クレアチニン比測定」という腎機能を詳しく調べる検査を行うことがあります。

それぞれの検査の特徴を説明します。

  • 24時間蓄尿
    この検査では、1日分の尿をすべて集めて尿中の蛋白質の総量を調べます。朝から翌朝までの尿を専用の容器に集めます。最初の尿は捨て、その後の尿をすべて容器に入れ、冷蔵庫で保管します。これにより、尿中の蛋白質の量を正確に測定できます。少し手間がかかりますが、とても正確な検査です。
  • 蛋白/クレアチニン比測定
    この検査では、1回だけ尿を採取して尿中の蛋白質量を調べます。尿を専用の容器に採取し、尿中の蛋白質とクレアチニンの比率を測定します。24時間尿を集める必要がないので、簡単で患者さんの負担が少ない検査です。24時間蓄尿ほど正確ではありませんが、十分な評価が可能です。

どちらの検査を行うかは、症状の進行具合や検査の目的、生活状況、過去の検査結果などを踏まえて総合的に判断されます。

たとえば、高血圧やむくみが急激に出ている場合は、正確な評価をするために「24時間蓄尿」
日常的な健診で簡易的に評価したい場合は、「蛋白/クレアチニン比測定」
入院できる場合は「24時間蓄尿」
過去の検査でずっと蛋白尿が出ている場合、定期的な観察目的で「蛋白/クレアチニン比測定」など。

先生が状況に合わせて判断してくれるので、お任せくださいね。

ちなみに、蛋白/クレアチニン比測定の検査結果は「0.3以上」が陽性です。
陽性の場合、妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。
妊娠高血圧症候群は、高血圧とともに尿中の蛋白質が増加する病気で、ママや赤ちゃんに悪い影響を及ぼす可能性があるので、さらなる詳しい検査が必要となります。

さいごに

妊婦健診の尿検査は、ママと赤ちゃんの健康を守るためにとても大切な検査です。尿糖や尿蛋白をチェックすることで、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などのリスクを早めに見つけて、必要な対策を取ることができます。不安なことがあれば、遠慮なく医師や助産師に相談してくださいね。みなさんが健康で幸せな妊娠期間を過ごせますように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました